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建設業許可の申請を急ぐ前に。中小企業が知るべき無許可工事のリスクと契約前の確認点

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2026.06.21
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この記事の監修

社会保険労務士 行政書士 公認 不動産コンサルティングマスター

松原 元

平成23年12月に社会保険労務士登録、平成25年5月に行政書士登録し、ダブルライセンスで労務・社会保険関係から建設業、宅建業、産廃等の 許認可の取得・維持までをワンストップで対応可能。資金繰りのサポートも行っており、200件以上の融資支援実績を持つ。

建設業許可の申請を急ぐ前に。中小企業が知るべき無許可工事のリスクと契約前の確認点

建設業許可の取得は、事業拡大や元請からの要請により、急務となることが少なくありません。しかし、焦るあまり、許可取得前に重要なリスクを見落としてしまうケースも多く見られます。特に従業員30名までの中小・零細企業においては、専任の法務担当者がいないこともあり、判断に迷うこともあるかと存じます。当事務所へのご相談でも、「来月の現場に間に合わせたい」「元請から許可を求められた」といった緊急性の高いお声から始まることが一般的です。

このような状況で、まず確認すべきことは、申請書類の作成準備ではありません。最も重要なのは、予定している工事が「許可なしで請け負える工事(軽微な建設工事)」に該当するのかどうかを正確に判断することです。許可が必要な工事であるにもかかわらず、無許可で契約・着工を進めてしまうと、後に重大な行政処分や信頼失墜に繋がりかねません。

本記事では、建設業許可申請を進める前に、中小企業の経営者がまず確認すべき無許可工事のリスクと、トラブルを避けるための具体的なステップを、社会保険労務士・行政書士の両視点から解説します。適正な事業運営を目指すための一助となれば幸いです。

目次

許可申請を急ぐ中小企業が陥りがちな落とし穴

建設業許可の相談では、「急いで許可を取りたい」というお声から始まることが一般的です。元請から許可取得を求められたり、間近に迫った現場に間に合わせたいという状況で、「とにかく申請だけ先に出したい」と焦る経営者の方もいらっしゃるでしょう。

例えば、内装工事会社を経営する方が、法人設立から2年、個人事業時代を含め8年間の経験を持ち、店舗やオフィスの内装仕上工事などを手掛けてきたとします。ある日、元請から「今後は建設業許可がない業者には発注しにくい」と言われ、来月には飲食店の内装工事を元請として受注する予定がある、というご相談がありました。請負金額は税込680万円程度で、「材料込みでだいたいそのくらい」とのことでした。

この相談者は、「内装工事だから500万円を超えても許可はいらないのではないか」「材料を別にすれば500万円未満にできるかもしれない」「専任技術者は、昔一緒に働いていた職人の名前を借りられるかもしれない」「とにかく来月の現場に間に合わせたい」といったご意向をお持ちでした。

しかし、このケースの本質は、許可申請のスピードではありません。許可がない状態で、税込680万円程度の内装工事を請け負おうとしている点に、まず目を向ける必要があります。

無許可工事のリスク:請負金額と工事内容の見極め

建設業許可を持たない事業者が請け負える工事は、建設業法(昭和24年法律第100号)で「軽微な建設工事」として定められています。この基準を正確に理解し、予定工事が該当するか否かを判断することが、無許可営業のリスクを避ける上で極めて重要です。

「軽微な建設工事」の基準と請負金額の算定

建設業法第3条第1項および建設業法施行令(昭和24年政令第273号)第1条の2により、建設業許可なしで請け負うことが認められる「軽微な建設工事」の基準は以下の通りです。

  • 建築一式工事の場合:請負代金の額が1,500万円未満の工事、または延べ面積が150平方メートル未満の木造住宅工事
  • 建築一式工事以外の専門工事の場合:請負代金の額が500万円未満の工事

今回の相談事例のような内装仕上工事は専門工事に該当すると考えられるため、請負代金が500万円未満であるかどうかが判断基準となります。請負代金の額を算定する際には、以下の点にご注意ください。

  • 消費税込みの金額: 請負代金には原則として消費税を含んだ金額が適用されます。税抜では500万円未満でも、税込で500万円以上となる場合は許可が必要です。
  • 材料費込みの金額: 注文者が材料を提供する「支給品」の場合を除き、建設業者が材料を調達して工事を行う場合、その材料費も請負代金に含めて計算します。
  • 工事の分割: 一つの建設工事を契約上形式的に分割しても、実態として一体の工事と認められれば、それらの請負代金の合計額で「軽微な建設工事」の基準が判断されることになります。

参照元:

工事内容の見極め:「内装だから内装仕上工事」の誤解

「内装工事だから内装仕上工事業でいい」と安易に判断することは避けるべきです。飲食店の内装工事一つをとっても、実際には以下のような多様な工事が含まれることがあります。

  • 造作、建具(大工工事、建具工事)
  • 電気、給排水、空調(電気工事、管工事)
  • 解体、消防設備(解体工事業、消防施設工事業)
  • 内装仕上(軽天・ボード、床仕上げなど)

これらの工事の中には、内装仕上工事業の許可だけでは対応できない業種が含まれる可能性があります。見積書や仕様書、図面を細かく確認し、どのような工事内容がどの範囲で含まれているのかを詳細に把握することが、適切な業種判断の第一歩となります。

建設業許可申請でよくある誤解と危険な進め方

許可申請を急ぐあまり、必要な要件や適正な手続きについて誤解したまま進めてしまうと、後々大きな問題に発展する可能性があります。特に中小企業では、情報収集や確認に十分な時間が割けないことも少なくないため、注意が必要です。

許可要件の確認が書類準備に先行すべき理由

建設業許可申請には、登記事項証明書、定款、決算書、納税関係資料、経験資料、資格証、社会保険関係資料など、多岐にわたる書類が必要です。しかし、書類作成に意識が向きすぎてしまうと、以下のような重要なリスクを見落とすことにも繋がりかねません。

  • 許可が必要な工事を、許可取得前に契約・着工しようとしている。
  • 実際の工事業種が、想定している業種だけではない可能性がある。
  • 専任技術者などの許可要件を、曖昧なまま進めようとしている。

これらの問題を事前に確認せず、書類作成だけを先行させると、結果的に申請が無駄になったり、さらに大きなトラブルに発展する可能性も否定できません。

「専任技術者の名前だけ借りる」ことの重大なリスク

「専任技術者は、昔一緒に働いていた職人の名前を借りられるかもしれない」といったご意向を伺うことがありますが、これは建設業許可制度において最も危険な行為の一つです。「専任技術者」とは、営業所に常勤し、その職務に専ら従事する者のことであり、単に資格や経験を持つ人の名前を借りるだけでは要件を満たしません。

具体的には、その方が営業所に毎日出勤し、健康保険や厚生年金保険の被保険者としてその営業所に所属しているなど、常勤の実態が求められます。もし要件を偽って申請した場合、「虚偽申請」とみなされ、許可が下りないだけでなく、5年間の許可申請が不可能になったり、既に取得している許可が取り消されたりするなどの重大な処分を受ける可能性があります。これは、事業継続に関わる甚大なリスクとなりますので、くれぐれもご注意ください。

専門家が提案する「許可申請前の確認フロー」

当事務所では、建設業許可の初回ご相談において、まず来月の工事を中心に以下の順序で状況を整理することをお勧めしております。この順番を誤ると、申請書類の準備は進んだとしても、そもそも予定工事を適法に請け負えないという事態に陥りかねません。

STEP1:予定工事の契約内容と工事範囲を詳細に確認する

まず、これから請け負う予定の工事について、具体的な内容を徹底的に確認します。

  • 契約・着工予定日: 許可取得までの期間を考慮し、無許可工事とならないかを見極めます。
  • 請負金額: 税込・税抜、材料費込みかを確認し、「軽微な建設工事」の基準に照らします。見積書や契約書案を詳細に確認し、曖昧な点は発注元に確認を取りましょう。
  • 工事範囲の内訳: 見積書、工事内訳書、図面、仕様書などを確認し、含まれる具体的な作業内容と工事業種を特定します。

「材料を別にすれば500万円未満になる」といった希望ではなく、実際の契約内容と工事の実態を基準に整理することが不可欠です。実態として一つの工事であれば、形式的に分割しても軽微な建設工事には該当しない可能性が高いと認識しておく必要があります。

STEP2:元請・下請関係と工事期間を整理する

ご自身が元請となるのか、それとも下請として工事を請け負うのかも、重要な確認事項です。

  • 元請か下請か: 元請の場合、より広範な責任が伴うことが一般的です。
  • 下請に出す金額: 元請の場合、特定建設業許可の要否判断に関わるため、下請業者に発注する予定金額も確認します。
  • 許可前の契約・着工リスク: 許可が必要な工事を許可取得前に契約・着工することは、行政指導や罰則の対象となる重大なリスクがあります。安易な判断は避けるべきです。

STEP3:建設業許可要件を事前確認する

予定工事のリスクを整理した上で、次に事業者が建設業許可の要件を満たせるかを確認します。これにより、申請が可能かどうか、どのような準備が必要かが明確になります。

  • 常勤役員等(経営業務の管理責任者): 適切な経営経験を持つ方がいるか。
  • 専任技術者: 各営業所に常勤し、必要な資格または実務経験を持つ技術者がいるか。社会保険の加入状況も確認します。
  • 財産的基礎: 自己資本が500万円以上あるか、または同等以上の資金調達能力があるか。
  • 欠格要件・誠実性: 役員などが、過去に建設業法やその他法令に違反していないか、契約履行について不誠実な行為がないか。
  • 社会保険加入状況: 法人の場合、社会保険(健康保険、厚生年金保険)及び労働保険(雇用保険)に加入していることが原則として求められます。

これらの要件は多岐にわたるため、当事務所のような専門家にご相談いただくことで、スムーズに確認を進めることが可能です。

STEP4:必要に応じて行政庁へ事前相談を行う

特に判断が難しいケースや、複数の業種にわたる工事の場合など、必要に応じて申請先の行政庁(都道府県庁の建設業許可担当窓口など)に事前に相談することも有効な手段です。行政庁の担当者は、個別の事例について一般的なアドバイスをしてくれることがあります。中小企業庁が運営するJ-Net21のような情報サイトも、情報収集に活用することも推奨されます。

無許可工事のリスク回避と適正な事業運営のために

建設業許可の申請を進める上で、書類作成に意識が向きがちですが、それ以上に重要なのは、無許可工事によるリスクを徹底的に回避し、法令遵守に基づいた適正な事業運営を目指すことです。これは、企業の信頼性を高め、長期的な成長基盤を築く上で不可欠な要素と言えるでしょう。

このケースで最初に確認すべきは、来月の工事の実態です。具体的には、元請から提示された見積書、契約書案、注文書案、工事内訳書、図面、仕様書などを詳細に確認します。これにより、工事金額、工事範囲、契約形態などが明確になります。

「内装です」「500万円未満にできます」「名前だけ借りられます」といった、安易な言葉の裏には、実務上、非常に大きなリスクが隠れていることがあります。もし無許可で建設業法に違反する工事を請け負った場合、行政処分(営業停止命令や罰金刑)や企業の信用失墜、さらには訴訟リスクに繋がる可能性も否定できません。

このようなリスクを避けるためには、焦らず、正確な情報に基づいた判断が求められます。当事務所では、経営者の皆様が安心して事業に取り組めるよう、実務に即したアドバイスを提供しております。まずはご相談いただき、現状のリスクを専門家とともに整理することをお勧めします。

Q&A:建設業許可に関するよくある疑問

中小企業の経営者の皆様からよくいただくご質問とその回答をご紹介します。

Q1: 個人事業主時代の経験は許可申請に使えますか?

A1: はい、原則として個人事業主時代の経営経験や実務経験も、建設業許可の要件(常勤役員等や専任技術者)として利用することが可能です。ただし、その経験を客観的に証明できる資料(確定申告書の控え、契約書、請求書、工事写真など)を準備しておく必要があります。

Q2: 建設業許可申請にはどれくらいの費用と期間がかかりますか?

A2: 費用については、行政庁に支払う手数料(知事許可の場合で申請時に9万円など)と、専門家報酬が発生します。期間については、書類収集から申請まで1〜2ヶ月、申請から許可が下りるまで行政庁の審査期間としてさらに1〜2ヶ月程度かかることが一般的です。全体として2ヶ月〜4ヶ月程度の期間を見込んでおくことが望ましいでしょう。

Q3: 許可申請を急ぐ場合、専門家に相談するメリットは?

A3: 許可申請を急ぐ場合こそ、専門家(行政書士)に相談するメリットは大きいと言えます。特に中小企業では、経営者ご自身や少人数の事務担当者が他の業務と兼務しながら申請準備を進めるケースがほとんどだからです。専門家は、無許可工事のリスクや虚偽申請の危険性などの早期発見、正確な情報提供、効率的な書類作成、そして審査の通過率向上に貢献します。当事務所では、初回無料相談を実施している場合もございますので、まずはご活用をご検討ください。

まとめ:中小企業の経営者が取るべき最初の一歩

建設業許可の申請において、最も大切なのは「早く申請すること」ではなく、「適法に工事を請け負える状態を作り、通る可能性のある申請をすること」です。そして、「許可が取れるか」と「その工事を今すぐ請けてよいか」は、別々の問題として整理する必要があります。

当事務所にご相談いただいた際には、まず来月予定している工事について、以下の点を中心に整理いたします。

  1. 許可が必要な工事に該当するかどうか。
  2. どの建設業種に当たるのか。
  3. 許可取得前に契約を締結したり、着工を進めたりしても問題がないか。
  4. 請負金額や工事範囲に法的な問題がないか。
  5. 専任技術者の名義貸しや虚偽申請といった危険性がないか。

これらの点を最初に明確にし、無許可工事のリスクを回避することが、中小企業経営者にとっての最初の一歩です。その上で、業種、許可区分、常勤役員等、専任技術者、財産的基礎、社会保険加入状況、欠格要件といった許可要件を順番に確認し、許可取得に向けた具体的な準備を進めてまいります。

急いでいるときほど、冷静かつ正確な判断が求められます。当事務所は、従業員30名までの中小・零細企業の経営者の皆様に寄り添い、コストと工数のかけ過ぎを避けながら、現実的かつ具体的な解決策をご提案いたしますので、どうぞご安心ください。

本記事の内容は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案については必ず専門家にご相談ください。

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