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直行直帰の移動時間は労働時間になるのか?中小企業経営者が確認すべき実態とリスク

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2026.07.05
  • 就業規則管理
  • 総務の助っ人
  • 総務の助っ人ラボ

この記事の監修

社会保険労務士 行政書士 公認 不動産コンサルティングマスター

松原 元

平成23年12月に社会保険労務士登録、平成25年5月に行政書士登録し、ダブルライセンスで労務・社会保険関係から建設業、宅建業、産廃等の 許認可の取得・維持までをワンストップで対応可能。資金繰りのサポートも行っており、200件以上の融資支援実績を持つ。

目次

直行直帰の移動時間、なぜ「労働時間ではない」と一括りにできないのか?

外回りの営業職やメンテナンス職において、自宅から直接顧客先へ向かい、一日の業務終了後にそのまま帰宅する「直行直帰」は珍しい働き方ではありません。しかし、この直行直帰における移動時間をどのように扱うかについては、多くの経営者様が悩まれていることと思います。

「移動中は作業していないのだから労働時間ではない」「自宅から現場へ向かうのは通勤のようなもの」と会社側は考えがちです。一方で、従業員様からは「会社の指示で遠方の現場へ行っている」「朝早く出なければ間に合わない」「部品や工具を積んで移動している」といった声が聞かれることもあります。

結論から申し上げますと、直行直帰の移動時間を「すべて労働時間ではない」と一括りに判断することは、潜在的なリスクを抱える可能性があります。 当事務所では、まず移動の種類を細かく分け、それぞれの状況において「会社の指揮命令下に置かれている時間といえるか」を慎重に確認することを推奨しています。この視点が、未払い残業代や労務トラブルを未然に防ぐ上で極めて重要です。

目次

移動時間の労働時間性を判断する「本質的な視点」

直行直帰の移動時間が労働時間にあたるかどうかは、単に「移動中に身体を動かして作業していたかどうか」だけで決まるものではありません。最も重要な判断基準は、その時間が「会社の指揮命令下に置かれている時間」と言えるかどうかです。厚生労働省が示す労働時間の考え方においても、労働時間とは「使用者の指揮命令下に置かれている時間」と定義されています(厚生労働省「労働時間の適正な把握のために」)。

この視点に立つと、直行直帰に伴う移動時間の中には、性質が異なるものが混在していることがわかります。これらをすべて同じように扱うと、実態を見誤り、適切な労務管理が困難になります。

「作業有無」ではなく「指揮命令下にあるか」が重要

多くの経営者様が「移動中は運転しているだけで作業をしていないのだから労働時間ではない」と考えがちですが、これは必ずしも当てはまりません。会社からの指示により、特定の場所への移動が義務付けられている場合や、移動中に業務に必要な物品を運搬している場合など、実質的に会社の指揮命令下に置かれていると判断される状況であれば、その移動時間は労働時間とみなされる可能性があります。

例えば、朝一番の顧客訪問に間に合わせるため、会社から「〇時までに現地に到着すること」と具体的な指示があった場合、その移動時間は業務遂行に不可欠な時間となり得ます。また、会社支給の工具や部品を自家用車に積んで移動している場合も、単なる通勤とは異なり、業務性が認められることがあります。

直行直帰に潜む、性質の異なる「5つの移動時間」

直行直帰における移動時間は、以下のようにいくつかのパターンに分けて考えることができます。それぞれのパターンで、労働時間性の判断基準が異なります。

  1. 自宅から最初の顧客先への移動:通常の通勤に近い性質を持つ場合があります。しかし、会社から具体的な到着時刻が厳しく指定されていたり、会社の工具や部品を運搬していたり、前日からの準備作業(車両への積込みなど)を命じられていたりする場合は、単なる通勤とは異なる性質を持ち、労働時間と判断される可能性があります。
  2. 最後の顧客先から自宅への移動:これも帰宅に近い性質を持ちますが、会社への報告義務、使用した部品や工具の持ち帰り、社用車の管理指示などが伴う場合には、その指示内容によっては労働時間と判断されることもあります。
  3. 会社に立ち寄った後の顧客先への移動:朝、一度会社に出社して部品を積み込んだり、上司から具体的な業務指示を受けたりしてから顧客先へ向かう場合、会社に立ち寄った時点から業務が始まっていると判断される可能性が高いです。この場合、会社立寄りから顧客先への移動は明確に労働時間と整理されるべきでしょう。
  4. 顧客先から顧客先への移動:複数の業務場所を回るための移動であり、これは業務遂行に不可欠です。一般的に、これは労働時間として扱われるべき移動と判断されます。単なる通勤とは性質が大きく異なります。
  5. 業務準備(工具・部品の積込み、前日指示など):「明日のために工具と部品を前日に車へ積んでおいてください」といった会社からの指示があった場合、その準備時間は労働時間として整理される可能性があります。業務上必要な準備行為であり、会社の指揮命令下にあると判断されるためです。

中小企業経営者が陥りがちな「よくある誤解」と潜在リスク

直行直帰の移動時間に関する判断を誤ると、後々大きなトラブルに発展する可能性があります。当事務所が中小企業経営者様からよく伺う誤解と、それによって生じる潜在リスクについて解説します。

「運転しているだけだから労働時間ではない」という誤解

「移動中は運転しているだけで、実際に手を動かして作業をしているわけではないから労働時間ではない」という考えは危険です。前述の通り、労働時間とは「会社の指揮命令下に置かれている時間」を指します。たとえ運転中でも、それが会社の業務命令に基づく移動であり、業務遂行上不可欠な時間であれば、労働時間に該当する可能性があります。

例えば、会社から指定されたルートで移動し、途中で会社からの連絡に対応しているような場合、それは単なる運転ではなく、業務の一部とみなされることがあります。

「直行直帰は通勤と同じ」という誤解

自宅から最初の顧客先への移動や、最後の顧客先から自宅への移動は、確かに通勤に近い性質を持つ場合があります。しかし、会社が訪問先や訪問順、到着時刻、持参物、工具や部品の準備などを具体的に指示している場合は、その拘束性や業務性が高まり、単純な通勤とは言い切れません。

特に、遠方の顧客先への訪問で「〇時までに到着必須」といった具体的な指示がある場合、その移動は業務の一環として捉えられる可能性が高まります。

「顧客先での作業開始を始業とする」というルール化の危険性

多くの会社では、勤怠システム上「最初の顧客先で作業を開始した時刻」を始業時刻としています。しかし、このルールが実態と合致していないと、未払い賃金の原因となり得ます。

例えば、朝、会社に立ち寄って部品を積み込んでから顧客先へ向かっている場合、会社に立ち寄った時点から業務が始まっている可能性があります。このような状況で、顧客先での作業開始時刻を始業とするのは、実態との乖離があるため注意が必要です。

「36協定があるから大丈夫」という誤解

時間外労働・休日労働に関する労使協定(36協定)は、法定労働時間(原則1日8時間、1週40時間)を超えて労働させる場合や、法定休日に労働させる場合に、事前に締結・届出が必要な重要な制度です(労働基準法第36条)。しかし、36協定は、どの時間が「労働時間」に当たるかを決めるものではありません。

移動時間が労働時間に該当するにもかかわらず、その時間を労働時間として集計していなかった場合、実労働時間が36協定の上限を超過していた、あるいは割増賃金が適切に支払われていなかったという事態が発生する可能性があります。36協定は、あくまでも「適正に把握された労働時間」を前提とするものです。

当事務所が提案する「直行直帰の移動時間」整理の進め方

中小企業において、限られたリソースの中で直行直帰の移動時間を適切に管理するためには、体系的なアプローチが必要です。当事務所では、以下の手順で状況を整理し、リスクを低減することを推奨しています。

まず「移動時間分類表」で現状を可視化する

まずは、従業員様の一日の業務の流れを具体的に把握し、移動時間を前述の「5つの移動時間」に分類する表を作成します。この表には、それぞれの移動時間について、以下の要素を書き出してみましょう。

  • 会社の指示の有無:訪問順、到着時刻、持参物、ルート指定など、具体的な指示があったか。
  • 業務性の有無:移動中に顧客対応、情報収集、資料確認などの業務を行っていたか。
  • 拘束性の有無:会社の指揮命令下で行動が制限されていたか、自由に時間を利用できたか。
  • 業務準備の有無:工具・部品の積込み、前日準備などの指示があったか。
  • 移動手段と費用負担:社用車か自家用車か、ガソリン代や高速代の会社負担状況。

この分類表を作成することで、漠然と捉えていた移動時間の実態が明らかになり、どこに問題があるのか、どの時間が労働時間として判断されるべきかの「あたり」をつけることができます。

複数資料を突き合わせ「事実」を特定する

次に、作成した分類表と以下の各種資料を突き合わせ、事実関係を正確に把握します。勤怠記録だけでは実態を把握できない場合が多いため、複数の情報源から客観的な事実を集めることが重要です。

  • 雇用契約書・労働条件通知書:労働時間や賃金の定め。
  • 就業規則・直行直帰ルール:直行直帰に関する規定や、移動時間の扱い。
  • 勤怠システムの入力ルール:始業・終業時刻、休憩時間の入力方法。
  • 訪問スケジュール・作業日報:顧客先ごとの作業開始・終了時刻、移動経路。
  • 上司からの指示(チャット、メールなど):訪問順、到着時刻、持参物、前日準備の指示。
  • 車両日報・GPS・ETC履歴:移動経路、移動時間、会社立寄りの有無。
  • 賃金台帳・36協定:時間外労働の支払状況、協定の内容。
  • その他:従業員からの聞き取り(ただし、個別具体的な人物の描写は避けること)。

特に重要なのは、従業員様の一日の行動を時系列で並べることです。何時に自宅を出発し、会社に立ち寄ったか、部品を積み込んだか、最初の顧客先に到着したか、顧客先間をどのように移動したか、最後の作業終了後に会社の指示による報告や返却があったかなど、細かな流れを追うことで、労働時間として整理すべき範囲を具体的に確認できます。

ルールと実態の乖離を解消するための見直し

資料の突き合わせにより、現在のルールと実態との間に乖離があることが判明した場合、速やかに見直しを行います。

まず、就業規則や直行直帰ルールを明確化し、移動時間の取り扱いについて具体的に定めます。例えば、特定の条件下での移動時間を労働時間とみなすのか、通勤手当で対応するのかなどを明記します。労働基準法第89条により、常時10人以上の労働者を使用する事業場では就業規則の作成・届出が義務付けられています。

次に、勤怠管理システムの入力ルールを見直します。会社に立ち寄って業務を行った場合はその時点から始業とする、顧客先間の移動時間を労働時間として記録するなど、実態に即した入力方法を従業員に周知徹底します。少人数の体制でも、スマートフォンの位置情報機能やチャットでの報告など、低コストで実現できる記録方法を検討することも可能です。

事業場外みなし労働時間制を検討する際の注意点

直行直帰が多いからといって、安易に「事業場外みなし労働時間制」を導入できるわけではありません。この制度は、労働者が労働時間の全部または一部について、事業場外で業務に従事し、使用者の指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難である場合に適用されます(労働基準法第38条の2)。

現代では、スマートフォン、GPS機能、業務システム、チャットツールなどによって、事業場外で働く従業員の労働時間を把握することが比較的容易になっています。そのため、労働時間の算定が困難とは言えないケースも増えています。労働時間の把握が可能であるにもかかわらず、みなし労働時間制を適用することは認められません。導入を検討する際は、専門家である社会保険労務士にご相談いただき、慎重な検討が必要です。

制度確認を怠ると発生する「具体的なリスク」

直行直帰の移動時間に関する制度確認を怠り、誤った判断を続けることは、中小企業にとって以下のような具体的なリスクを招く可能性があります。

未払い残業代発生リスクとその影響

移動時間の一部が労働時間に当たるにもかかわらず、これを労働時間として集計せず、賃金が支払われていなかった場合、未払い残業代が発生します。未払い残業代は、過去に遡って最大で3年間(2020年4月1日以降に発生した賃金債権については当面の間3年、将来的に5年)、支払いを求められる可能性があります(労働基準法第115条)。

これには通常の賃金だけでなく、法定の割増賃金(労働基準法第37条)も含まれます。さらに、付加金(労働基準法第114条)の支払いを命じられる可能性もあり、企業の財務状況に大きな打撃を与えることになります。

労働基準法違反・36協定違反のリスク

未払い残業代が発生している状況は、労働基準法違反となります。また、移動時間を労働時間として計上しなかった結果、実労働時間が36協定で定めた上限時間を超過していた場合、36協定違反となります。

これらの違反が労働基準監督署の指導や勧告の対象となり、改善命令が出されることがあります。悪質な場合は、罰則が適用される可能性もゼロではありません(労働基準法第119条)。企業の社会的信用にも関わる問題です。

長時間労働による健康管理上の問題

例えば、朝早く自宅を出発し、夜遅く帰宅するという長時間拘束が常態化している場合、たとえ一部が労働時間とカウントされていなくても、従業員様の心身の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。会社には、従業員の健康と安全に配慮する「安全配慮義務」(労働契約法第5条)があります。労働時間管理の不備は、この安全配慮義務違反にも繋がりかねません。

健康問題は、生産性の低下、休職、退職など、企業経営に直結する課題です。特に少人数の企業では、一人ひとりの従業員が戦力であり、健康問題は事業継続にも影響を及ぼします。

従業員との信頼関係悪化・紛争リスク

従業員様が「移動時間が正しく評価されていない」「労働時間に見合った賃金が支払われていない」と感じた場合、会社への不満や不信感が募り、モチベーションの低下に繋がります。これが顕在化すると、従業員からの訴えや労働組合への相談、弁護士を通じた未払い残業代請求などに発展し、労務紛争となるリスクが高まります。

紛争解決には時間も費用もかかり、結果的に会社の評判を損ねるだけでなく、優秀な人材の流出にも繋がりかねません。透明性の高いルールと適切な運用は、従業員との良好な信頼関係を築く上で不可欠です。

中小企業が今すぐできる「コストを抑えた対応策」

直行直帰の移動時間管理は複雑に見えますが、中小企業の経営者様がすぐに取り組める、コストを抑えた現実的な対応策があります。

無料の就業規則診断や専門家相談窓口の活用

まずは、現在の就業規則や直行直帰に関する社内ルールが、法的に適切であるかを確認することから始めましょう。資金的な負担を心配される経営者様もいらっしゃるかと存じますが、無料で利用できる公的機関の相談窓口が多数存在します。

  • 各都道府県の労働局・労働基準監督署:労働基準法に関する相談や情報提供を行っています。匿名での相談も可能です。
  • 商工会議所・商工会:中小企業向けの経営相談の一環として、労務に関する相談を受け付けている場合があります。
  • よろず支援拠点:国が設置する無料の経営相談所。労務問題を含む幅広い経営課題について相談できます(中小企業庁「よろず支援拠点」)。

これらの窓口を積極的に活用し、専門家(社会保険労務士など)に初期相談を行うことで、自社の状況を整理し、必要な対策の方向性を把握することができます。

現行ルールの明確化と従業員への周知徹底

現在の直行直帰ルールや移動時間の取り扱いが曖昧な場合は、まずこれを明確に言語化することが重要です。就業規則や社内規定に、以下のような点を具体的に盛り込みましょう。

  • 直行直帰の定義と対象者
  • 移動時間の労働時間性に関する具体的な判断基準(どのような場合に労働時間とするか)
  • 勤怠報告の具体的な方法とタイミング
  • 通勤手当や移動手当の考え方
  • 業務に必要な物品の運搬や事前準備に関するルール

ルールを明確にしたら、次に従業員への周知徹底を行います。一方的に押し付けるのではなく、説明会を開催したり、質疑応答の機会を設けたりして、従業員の理解と納得を得ることが大切です。ルールが周知されていなければ、適切な運用はできません。

記録方法の改善と効率化

正確な労働時間管理は、労務リスクを低減する上で不可欠です。少人数の体制でも導入しやすい、低コストで効率的な記録方法を検討しましょう。

  • 訪問日報・作業報告書:従業員に、顧客先での作業開始・終了時刻、移動経路、移動時間、会社への立ち寄りの有無などを詳細に記入させます。テンプレート化することで、入力の手間を減らせます。
  • GPS機能やETC履歴の活用:社用車を使用している場合や、従業員が同意する範囲で(プライバシーに配慮しつつ)、GPS機能付きのスマートフォンやETCの履歴データを活用して、移動経路や時間を客観的に把握することも有効です。ただし、従業員のプライバシー保護には十分な配慮が必要です。
  • チャットや業務システム:顧客訪問時の出発・到着報告や、業務準備の完了報告などをチャットや簡易的な業務システム上で行うことで、タイムスタンプが残り、客観的な記録として活用できます。

これらの記録を定期的に確認し、実態とルールとの乖離がないかをチェックする体制を構築しましょう。

専門家(社会保険労務士)への相談のすすめ

直行直帰の移動時間の労働時間性判断は、個々の会社の状況や業務内容によって判断が分かれる複雑な問題です。特に、未払い賃金のリスクや従業員との紛争を避けるためには、専門的な知識と経験が不可欠です。

当事務所のような社会保険労務士は、貴社の具体的な業務実態や就業規則などを詳細に確認し、労働基準法その他の関連法令に基づいて、移動時間の労働時間性を判断し、適切な勤怠管理体制の構築や就業規則の見直し、リスク回避のための具体的なアドバイスを提供いたします。まずは一度ご相談いただくことをお勧めします。

よくある質問(Q&A)

Q1: 自家用車を使っている場合の移動時間はどうなりますか?

A1: 自家用車を使用している場合でも、移動時間が会社の指揮命令下に置かれていれば労働時間とみなされる可能性があります。例えば、会社の指示で遠方の顧客先へ向かうために自家用車を使用している場合や、会社支給の工具や部品を積んで移動している場合などです。会社は、自家用車利用に関するルール(車両手当、ガソリン代、保険、事故時の対応など)を明確にし、就業規則に定めておくことが重要です。また、移動距離や時間に応じて、適切な手当や賃金を支払うかどうかも検討が必要です。

Q2: 「休憩時間」として移動時間を設定しても問題ないですか?

A2: 移動時間を一律に「休憩時間」として設定することは、原則として認められません。労働基準法第34条では、休憩時間は「労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間」とされており、自由に利用できる時間でなければなりません。移動中、運転義務や業務指示によって行動が制限されている場合は、労働から完全に解放されているとは言えず、休憩時間とは認められません。休憩は労働時間の途中に与えるものであり、直行や直帰の移動時間を休憩として処理することは実態に合わない可能性が高いです。

Q3: 会社からの具体的な指示がなければ、労働時間にはなりませんか?

A3: 会社からの具体的な指示がなくても、その移動が業務遂行上不可欠なものであり、実質的に会社の指揮命令下に置かれていると判断される場合は、労働時間とみなされることがあります。例えば、複数の顧客先を訪問する際の顧客先間の移動は、たとえ「何時に出発しろ」という具体的な指示がなくても、業務として行われるものであり、労働時間と判断されるのが一般的です。重要なのは、形式的な指示の有無だけでなく、業務全体におけるその時間の位置づけや拘束性です。

Q4: 移動中に交通事故が起きた場合、労災になりますか?

A4: 業務中の移動であれば、交通事故は労働災害(労災)として認定される可能性があります。業務遂行中に発生した事故は、原則として労災の対象です。自宅から最初の顧客先への移動や最後の顧客先から自宅への移動についても、それが会社の具体的な業務指示に基づくものであったり、業務に必要な物品を運搬中であったりするなど、業務遂行性が認められる場合は労災となる可能性があります。ただし、通勤途中の事故(通勤災害)とは区別され、その判断には個別の状況確認が必要です。当事務所では、労災に関するご相談も承っております。

まとめ

直行直帰における移動時間は、単純に「通勤だから労働時間ではない」と一括りにできるものではありません。一方で、すべての移動時間を一律に労働時間とすることも、必ずしも適切とは限りません。中小企業の経営者様が労務リスクを回避し、健全な事業運営を行うためには、移動時間の性質を細かく分類し、それぞれの状況で「会社の指揮命令下に置かれているか」を慎重に判断することが不可欠です。

当事務所では、貴社の雇用契約書、就業規則、勤怠記録、訪問スケジュール、チャットでの指示内容など、複数の資料を突き合わせ、従業員様の一日の流れを時系列で確認することを推奨しています。この事実確認を徹底するまでは、「移動時間は労働時間ではない」と断定しないことが重要です。

未払い残業代や労務紛争といった潜在的なリスクを未然に防ぎ、従業員様が安心して働ける環境を整備するためにも、まずは貴社の直行直帰に関する現状を整理し、必要に応じて専門家である社会保険労務士にご相談ください。少人数の体制でも実現可能な、現実的かつ具体的なアドバイスを提供することで、貴社の経営を力強くサポートさせていただきます。

本記事の内容は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案については必ず専門家にご相談ください。

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