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建設業の法人設立を検討中の経営者様へ:許可要件の確認が事業開始の鍵です

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2026.06.28
  • 法務・リスク管理
  • 総務の助っ人ラボ
  • 許認可

この記事の監修

社会保険労務士 行政書士 公認 不動産コンサルティングマスター

松原 元

平成23年12月に社会保険労務士登録、平成25年5月に行政書士登録し、ダブルライセンスで労務・社会保険関係から建設業、宅建業、産廃等の 許認可の取得・維持までをワンストップで対応可能。資金繰りのサポートも行っており、200件以上の融資支援実績を持つ。

目次

「元請けから法人化した方が良いと言われたけど、会社を作れば建設業許可も取れますよね?」

このようなご相談は、建設業を営む個人事業主の経営者様からよくお寄せいただきます。長年の経験を持つ方ほど、「法人化が次のステップ」というイメージをお持ちになるケースが一般的です。

しかし、当事務所では、建設業の法人設立に関するご相談があった際に、いきなり会社設立の手続きから進めることは原則としてありません。まず最初に整理するのは、「予定している事業が法制度上どのような手続きを必要とするのか」という点です。

会社を設立すること自体は、比較的短期間で完了できる場合もあります。しかし、建設業においては、法人設立後すぐに事業を開始できるとは限りません。特に、建設業許可が必要な工事を請け負う場合、許可要件を満たし、所定の手続きを経て許可を取得することが事業継続の前提となります。

本記事では、建設業の法人設立を検討中の経営者様が、会社設立と建設業許可を混同することなく、円滑に事業を開始・拡大するための整理術と注意点について、当事務所の見解と具体的な進め方をご紹介いたします。

本記事の目次

結論:建設業の法人設立は「事業開始のための一工程」。まず許可要件の確認が重要です。

建設業において法人を設立することは、事業拡大や社会的な信用向上に繋がる重要なステップです。しかし、会社設立はあくまで「事業を行うための器を作る」ことであり、実際に建設業を営むためには、建設業法に基づく適切な許認可が必要となる場合があります。

具体的には、請け負う工事の規模によっては「建設業許可」の取得が不可欠です。この許可なくして、特定の工事を請け負うことは法律で禁止されており、罰則の対象となるリスクがあります。

経営者が陥りやすい「会社設立先行」の落とし穴

当事務所にご相談いただくケースで、よく見られるのが「とにかく会社を先に作る」という判断です。

例えば、「元請け会社から法人化を促されている」「〇ヶ月後の大型案件に間に合わせたい」といった状況の場合、焦りから、建設業許可の要件確認や必要資料の準備を十分に行わないまま法人設立を進めてしまうことがあります。

しかし、会社は設立できても、建設業許可の要件を満たさなければ、予定していた事業が開始できない、あるいは中断せざるを得ない事態に陥る可能性があります。これは、事業計画に大きな遅れを生じさせるだけでなく、経済的な損失にも繋がりかねません。

建設業許可と法人設立の基本的な関係性

建設業許可は、建設業法により規定される許認可です。この許可を得るためには、法人としての存在だけでなく、以下の点を含め、複数の厳しい要件を満たす必要があります。

  • 経営業務の管理責任者(役員等)の経験
  • 専任技術者(営業所ごとに配置)の資格・経験
  • 財産的基礎(資本金や自己資本額など)
  • 営業所の設置
  • 適切な役員構成

これらの要件は、法人設立前に計画的に検討し、準備を進めることが望ましいです。会社設立の手続き自体は行政書士がサポートできますが、許可要件の充足は経営者様ご自身の実績や体制にかかってきます。

なぜ「会社設立」よりも「建設業許可の要件」を先に確認すべきなのか

建設業の経営者様が、会社設立を検討する際、最も優先すべきは、「予定している事業内容で建設業許可が必要になるか、そしてその許可要件を満たせる見込みがあるか」という点です。

建設業許可の取得が事業継続の生命線となるケース

建設業法第3条により、建設工事の請負契約を締結する事業者は、原則として建設業の許可を受けなければなりません。ただし、以下のいずれかの「軽微な建設工事」のみを請け負う場合は、許可が不要とされています。

  • 1件の請負金額が500万円未満の建設工事(建築一式工事以外)
  • 建築一式工事で、請負金額が1,500万円未満の工事、または延べ面積150平方メートル未満の木造住宅工事

上記「軽微な建設工事」を超える規模の工事を請け負う場合、建設業許可は事業を継続するための生命線となります。元請会社からの受注や、公共工事への参入を考えるのであれば、建設業許可の取得は避けて通れません。

参考:e-Gov法令検索 建設業法

法人設立後に許可が取得できないリスク

「会社さえ作れば、許可は後から付いてくるだろう」という安易な考えで法人設立を先行させると、以下のようなリスクに直面する可能性があります。

  • 役員構成の問題: 建設業許可には「経営業務の管理責任者」の設置が義務付けられています。特定の役員がその要件を満たさない場合、役員変更が必要となるなど、再手続きの手間が生じる可能性があります。例えば、取締役への就任を予定していたご子息に、まだ就任意思の確認すらできていないといったケースも少なくありません。
  • 資本金・財産的基礎の不足: 建設業許可(一般建設業の場合)には、原則として「500万円以上の自己資本」または「500万円以上の資金調達能力」が求められます。法人設立時の資本金設定がこの要件を満たしていなければ、増資などの対応が必要になります。
  • 営業所の設置基準の不適合: 適切な営業所の設置も許可要件の一つです。自宅の一室を営業所とする場合でも、独立性が保たれているかなど、詳細な確認が必要です。
  • 必要書類の不足: 過去の工事実績を証明する請負契約書や請求書、通帳のコピーなど、多くの資料が必要となります。個人事業時代の資料が整理されていない場合、収集に時間がかかり、申請が遅れる原因となります。

これらのリスクを回避するためには、法人設立前に建設業許可の要件を十分に理解し、ご自身の現状と照らし合わせることが不可欠です。

建設業許可取得を見据えた法人設立の進め方:当事務所の整理ステップ

当事務所では、建設業の法人設立をご検討中の経営者様に対し、建設業許可の取得を見据えた上で、以下のステップで課題を整理し、具体的な手続きを進めることを推奨しています。

ステップ1:予定する工事内容と請負金額の明確化

まず、法人設立後にどのような建設工事を請け負う予定か、具体的な内容(例:建築一式工事、大工工事、内装仕上工事など)と、1件あたりの請負金額の見込みをお伺いします。

  • 請け負う工事の種類によって、建設業許可の「業種」が特定されます。
  • 請負金額によっては、建設業許可が不要な「軽微な建設工事」に該当する場合もありますが、今後の事業展開を考えると、許可取得を視野に入れることは有益です。
  • 元請けとして受注するのか、下請けとして受注するのかによっても、許可取得の緊急性や事業戦略が変わってきます。

この段階で事業計画を具体化することで、必要な許可の種類や要件が明確になります。

ステップ2:建設業許可の要件充足可能性の評価

ステップ1で明確になった事業内容に基づき、現在の体制で建設業許可の要件を満たせる見込みがあるかを多角的に評価します。

  • 経営業務の管理責任者(経管): 法人の役員のうち、適切な経営経験を持つ方がいるかを確認します。個人事業主としての経営経験も活用できる場合がありますが、必要な期間や業務内容が厳格に定められています。
  • 専任技術者: 営業所ごとに、請け負う業種に応じた資格(国家資格等)や実務経験を持つ技術者を配置できるかを確認します。
  • 財産的基礎: 資本金や自己資本の額が要件を満たせるか、または金融機関からの融資などで資金調達が可能かを確認します。
  • 営業所の実態: 営業活動を行う拠点があるか、またその場所が建設業許可の要件を満たす独立した機能を持つ場所であるかを確認します。

この際、個人事業時代の確定申告書、工事請負契約書、請求書、通帳のコピーなど、過去の実績を示す資料を可能な範囲でご準備いただくことで、より正確な評価が可能です。これらの資料は、許可申請時に「経験の証明」として不可欠となります。

ステップ3:役員構成・法人設計の検討と関係者への意思確認

建設業許可の要件を見据えた上で、法人の役員構成や資本金、事業目的などを具体的に設計します。

  • 役員構成: 誰を役員とするか、特に経営業務の管理責任者となる人物の選定は重要です。ご家族を役員に含める場合、ご本人への就任意思の確認は最優先事項です。本人の同意なく話を進めると、後々のトラブルや手続きのやり直しに繋がる可能性があります。
  • 資本金の決定: 建設業許可の財産的基礎要件を満たせる額を考慮し、資本金を設定します。
  • 事業目的: 定款に記載する事業目的は、将来的に請け負う可能性のある建設業種を幅広く含めておくことが、後々の変更手間を省く上で望ましいです。

この段階で、ご家族や関係者との間で十分に話し合い、合意形成を図ることが重要です。

ステップ4:全体スケジュールの策定と現実的な目標設定

上記の検討結果に基づき、法人設立、建設業許可申請、そして事業開始までの現実的なロードマップを策定します。

  • 法人設立手続き自体は数週間で完了することがありますが、建設業許可申請は書類作成や行政庁による審査期間を含め、通常1ヶ月半から2ヶ月程度かかることが一般的です(行政庁や申請時期により変動します)。
  • 特に大型案件や特定の契約締結日が迫っている場合は、逆算して各手続きの着手時期を計画する必要があります。
  • 不足資料の収集にかかる時間も考慮に入れ、余裕を持ったスケジュールを立てることが、結果的に最短での事業開始に繋がります。

当事務所では、経営者様のご状況と目標をお伺いし、無理のない現実的なスケジュールを共に組み立てるお手伝いをいたします。

中小企業がコストを抑えて建設業許可の準備を進めるには

従業員30名までの中小・零細企業においては、専門部署を置くことが難しい場合がほとんどです。経営者様ご自身または少人数の事務担当者様が、これらの手続きを兼任することも少なくありません。ここでは、コストと工数を最小限に抑えながら、建設業許可の準備を進めるためのポイントをご紹介します。

無料相談窓口の活用を検討する

建設業許可申請は複雑であり、専門知識を要します。しかし、いきなり高額な費用をかけて専門家へ依頼することに躊躇される経営者様もいらっしゃるかもしれません。

  • 地域の行政書士会による無料相談会: 各地域の行政書士会では、定期的に無料相談会を実施している場合があります。こうした機会を活用して、まずは現在の状況を話し、大まかな手続きの流れや必要書類についてアドバイスを得るのも良い方法です。
  • 商工会議所・商工会: 地域の中小企業を支援する商工会議所や商工会でも、専門家による相談窓口が設けられていることがあります。

これらの無料相談は、最初の情報収集として非常に有効です。ご自身の課題を整理するきっかけにもなりますので、お気軽にご利用を検討されてはいかがでしょうか。

必要書類の事前準備によるコスト削減

建設業許可申請には、多くの添付書類が必要です。これらの書類の収集を専門家に全て依頼すると、その分費用がかかることが一般的です。

  • 個人事業時代の資料整理: 確定申告書、工事請負契約書、請求書、領収書、通帳の写しなど、ご自身で管理されている資料を日頃から整理しておくことが重要です。これらが揃っているだけで、申請作業がスムーズになり、専門家への依頼費用も抑えられる場合があります。
  • 公的書類の取得: 住民票、戸籍謄本、登記されていないことの証明書、身分証明書など、ご自身で取得できる公的書類は、早めに準備しておくことをお勧めします。

日々の業務で忙しい中でも、少しずつでも書類を整理する習慣をつけることが、将来的な手続きの負担軽減に繋がります。

Q&A:建設業の法人設立と許可申請に関するよくある疑問

Q1: 個人事業での実績は法人設立後の建設業許可申請に活用できますか?

A1: はい、原則として活用できます。
建設業許可の要件である「経営業務の管理責任者」の経験や、「専任技術者」の実務経験は、個人事業主としての経験も評価対象となります。例えば、個人事業主として建設業を営んでいた期間が、経営業務の管理責任者としての経験年数(原則として5年以上)に算入される場合があります。ただし、その経験を証明するためには、確定申告書、請負契約書、請求書などの客観的な資料が必要となります。特に、経営業務に携わっていたことや、特定の業種の工事に従事していたことを明確に示す証拠の準備が重要です。

Q2: 建設業許可申請にはどのくらいの期間がかかりますか?

A2: 申請準備期間と行政庁の審査期間を合わせると、一般的に2〜3ヶ月程度を想定しておくのが適切です。
申請書類の準備には、個人事業時代の資料収集や、役員の経歴確認、営業所の図面作成など、1ヶ月〜1ヶ月半程度かかる場合があります。その後、行政庁に申請書類を提出し、審査期間として通常1ヶ月半から2ヶ月程度を要します(各行政庁の混雑状況により変動します)。大型案件の契約予定日がある場合は、十分な余裕を持って準備を開始することが望ましいでしょう。

Q3: 建設業許可申請における資本金(財産的基礎)の要件はどのくらいですか?

A3: 一般建設業許可の場合、原則として「500万円以上の自己資本」または「500万円以上の資金調達能力」が求められます。
具体的には、申請直前の決算において貸借対照表の純資産の部で500万円以上の金額があるか、または、金融機関から500万円以上の融資を受けられることが証明できる預金残高証明書などを提出することで、要件を満たせる場合があります。法人設立時の資本金設定は、この財産的基礎の要件を考慮して決定することが重要です。特定建設業許可の場合は、より厳しい財産的基礎の要件が定められています。

Q4: 建設業許可がないと、どのような問題が生じる可能性がありますか?

A4: 建設業許可がない状態で「軽微な建設工事」を超える工事を請け負うと、建設業法違反となり、以下の問題が生じる可能性があります。

  • 行政処分・罰則: 建設業法に違反すると、営業停止や罰金などの行政処分や罰則の対象となる場合があります。
  • 社会的信用の失墜: 法令違反は、顧客や取引先からの信用を失う原因となり、今後の事業展開に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。
  • 契約の無効化リスク: 無許可で締結された請負契約が、後に無効とされるリスクも否定できません。
  • 事業機会の損失: 公共工事への入札参加や、大手元請け会社からの受注は、原則として建設業許可が必須となるため、これらの事業機会を逃すことになります。

これらのリスクを避けるためにも、事業計画に沿って建設業許可の要否を判断し、適切な手続きを踏むことが重要です。

まとめ:焦らず、順序立てて事業拡大を目指しましょう

建設業で法人設立を検討される経営者様の多くは、事業をさらに大きくしたい、社会的な信用を高めたいという前向きな思いをお持ちです。

しかし、「会社を作ること」と「建設業を合法的に営むための許可を得ること」は、異なるプロセスであり、それぞれに要件があります。特に建設業においては、法人設立に先行して、「どのような事業を行うのか」「建設業許可は必要なのか」「その許可要件を満たせる見込みがあるのか」といった点を慎重に検討することが、事業を円滑にスタートさせるための鍵となります。

当事務所では、経営者様が抱える具体的な状況やご希望を丁寧にヒアリングし、建設業許可と法人設立の双方の視点から、最適な道筋をご提案いたします。焦って手続きを進めるのではなく、一つ一つのステップを順序立てて整理することが、結果として最短で、かつリスクを最小限に抑えながら事業拡大を実現する王道であると私は考えています。お困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

本記事の内容は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案については必ず専門家にご相談ください。

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